日本語の「好き」という言葉は、ペットや趣味、あるいは美味しいバインミーへの愛着といった、日々の暮らしに根ざした身近な関心を指す親しみやすい概念です。丸井グループは、誰もが日常の「好き(興味・関心)」を通じて社会に参画できるよう、あえてハードルの低いこの言葉を企業方針の中核に据えました。この哲学をベトナム語へ移し替える際にも、大げさな表現ではなく、ありのままの「好き(Sở thích)」という概念を大切に受け止めることが本質を捉える鍵となります。

一般的な「趣味(Sở thích)」は一時的な喜びに留まり、日々の生活の重圧の前には後回しにされがちです [2]。対して「情熱(Đam mê)」とは、厳しい現実に直面しても容易に諦めず、粘り強くやり抜く意志を意味します [1]。発展の途上にあるベトナム社会において、日々の生計という現実的な課題がある中では、一時的な好みに頼った起業は大きなリスクを伴うと指摘されています [1] [2]。しかし丸井グループが提唱する「好き」とは、そうした無謀さではなく、一人ひとりの素朴な価値観を温かく尊重する姿勢そのものです。
だからこそ私たちは、この共創の本質を「好き(Sở thích)」という言葉のまま捉えています。故郷のバインミーへの素朴な愛着から始まったバインミーシンチャオの歩みは、丸井グループが掲げる「『好き』が駆動する経済」という人間味あふれる長期構想と自然に響き合っています。
すべては「好き」から始まった
多くの人々は不思議に思うかもしれません。なぜ歴史が長く、サービス基準も極めて厳しい丸井グループが、バインミーシンチャオとの提携を決めたのだろうか、と。
この決断には、日本の食文化におけるバインミーの急速な普及という文脈を踏まえた、非常に鋭い大局的な視点(マクロビジョン)があります。かつては珍しい異国の味に過ぎなかったベトナムのバインミーですが、2024年には日本国内で500店舗を超えるという記録的なマイルストーンを達成し、今や日本人の日常生活に深く根を下ろしています [3]。

その勢いは、大手ファストフードチェーンの「フレッシュネスバーガー」がオリジナルのバインミーを投入して市場に参入したり、コンビニ大手の「セブン-イレブン」が店頭にバインミーを並べたりするほどです [3]。バインミーはもはや一時的な流行の「珍しい外国の食べ物」ではなく、日本の人々にとって日々の食生活の選択肢の一つへと進化しています。この大きなうねりの中で、日本のメディアからブームの「草分け的存在」として称されるバインミーシンチャオと丸井グループがタッグを組んだことには、単なるトレンドの追随を超えた確かな実需に基づく意味があります [3]。

丸井グループは2031年に向けて「『好き』が駆動する経済」という長期ビジョンを掲げ、「好きを応援するビジネス」を推進しています [4] [5]。同社の公式データによると、2026年度にはインパクト財務価値が3.5兆円に達し、総取扱高の約65%を占める見通しです [5]。価格や機能性の追求だけでなく、個人の関心や価値観を尊重する持続可能な事業モデルへの転換が進められています。

この方針は、2015年に「Taste Banh Mi, Taste Vietnam」を掲げて創業したバインミーシンチャオの歩みと重なります。故郷の味への素朴な愛着を起点に、品質管理と誠実な運営を積み重ねることで、海外市場における事業基盤を築いてきました。
相互理解が繋ぐボーダレスな価値創造

丸井店舗への出店においては、商業施設ごとの顧客層に合わせた柔軟な店舗戦略を採用しています。
- マルイファミリー溝口店: 商業施設における高水準な運営マニュアルを確立した基幹店舗。日本人のFCオーナーが運営を担当。
- 吉祥寺マルイ店: 顧客データに基づき、日本のお客様に人気の高い生春巻き(Gỏi cuốn)とフォーに着目。特製豚焼肉を包んだ新メニューを開発した体験型店舗。
- 錦糸町マルイ店: 駅前の需要に合わせ、生春巻きセットやフォーを手軽に利用できるテイクアウト主体のコンパクトモデル。中国系のFCオーナーが運営。
店舗ごとの施策はPOSデータの実数分析に基づいています。バインミーに加え、フォーや生春巻きに対する需要の高さがデータで裏付けられたことから、地域のお客様の好みに応じたメニューの最適化を行いました。

川口セントラルキッチンによる原材料の安定供給と、詳細なフランチャイズ運営マニュアルの整備により、全店舗で均一な衛生管理と品質水準を維持しています。
多国籍なFCオーナーとの協業実績は、ベトナム人起業チームによる異文化適応力と組織マネジメント能力の実効性を示しています。

強固な内実 — 最も厳格な舞台から世界へ羽ばたく翼
丸井グループとの取り組みは、オペレーション能力をさらに高める契機となりました。ベトナムの伝統的な味わいと、日本の厳格な衛生・規律基準を両立させることで、長期的な成長を見据えた事業体制を構築しています。
個人の「好き」を起点とした丸井グループの社会価値創造モデルの詳細については、同社の公式報告書『IMPACT BOOK 2026』にまとめられています [5]。

バインミーシンチャオは、丸井グループとのパートナーシップを通じて、日越両国の食文化の交流と地域社会への貢献を着実に進めてまいります。
10年間の歩みを通じて、製品への誠実な向き合い方と徹底した運営規律こそが、国境を越えて信頼されるブランドを育てる基盤であると確信しています。
参考文献
- Công Nhật (2016年1月13日). Khởi nghiệp vì đam mê hay sở thích?. Tuổi Trẻ Online.https://tuoitre.vn/khoi-nghiep-vi-dam-me-hay-so-thich-1037416.htm
- NovaEdu (2020年6月29日). “Sở thích” và “đam mê” khác nhau như thế nào?.https://novai.vn/tin-tuc/75-so-thich-va-dam-me-khac-nhau-nhu-the-nao.html
- TBSテレビ (2026年5月24日). なぜ人気?ベトナム料理の「バインミー」“和風”や“スイーツ系”も登場【THE TIME,】. TBS NEWS DIG.https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2680917?display=1
- 丸井グループ (2026年8月7日). 丸井グループが「IMPACT BOOK 2026」「ESGデータブック2026」を発行. 株式会社 丸井グループ.https://www.0101maruigroup.co.jp/nr/26_0807_1
- 丸井グループ (2026年8月7日). MARUI GROUP IMPACT BOOK 2026 (Full Report). 株式会社 丸井グループ.https://pdf.0101maruigroup.co.jp/ir/pdf/impactbook/2026/impactbook2026_all.pdf







